特措法論議で、民主党は「責任政党」へ脱皮できるか?

 これまで私は自民(ていうか安倍首相)に超厳しいことを書いてきたが、選挙も終わったし、安倍首相は辞める意向だしで、既に一段落ついた。この前の選挙では民主に入れたものの、別に私は民主支持者ではないから、いつまでも民主を甘やかす道理も無いと考える。

 そこで、今日は民主党の話をしよう。

 今後の、民主党の注目は「テロ対策特別措置法」関連だ。「え?それって自民党側の問題でないの?」と思う人もいるだろうが、そうではない。自民党よりも、民主党の対応のほうが注目なのだ。

 とはいえ、私は、次の産経主張にあるような意味で、民主党に踏み絵を迫っているのではない。


【主張】テロ特措法 国益考え責任政党の道を
 日米同盟や日本の国際的信用など、国益を考えた対応をとれないようでは、参院選で民主党を勝たせた有権者の多くが「やはり政権は任せられない」と見放すに違いない。

 産経は、「責任政党なら特措法延長に賛成すべき」と、結論から逆算してモノを書くから胡散臭いのである。「責任政党たること」と「その政策」は、関連性はあるものの、基本的には別個に考えるべき事柄である。「特措法延長に反対しつつ、責任政党として振舞う道」もある可能性もある。ていうか、民主党は、そのような道を歩むしか、選択肢は無い。

 つまり、冒頭に述べた注目点とは、「特措法延長に反対しつつ、責任政党として振舞う」ということを、如何に民主党がこなすか、なのである。

 しかし、このことの困難さは、想像に難くない。「責任政党」とは何か、様々な考えがあろうが、「反対のための反対をする」とか、「言っていることが一貫しない」とか、「党内の意見がまとまらない」とか、「審議拒否をする」とか、「採決を集団欠席」とかが、「責任ある」と見なされないことは、まず確実である。

 そこで民主党だが、まず、党内の意見がまとまっていない。前原前代表が延長に賛成っぽいのは言うまでもないが、それよりも心配なのは、「反対するにも、どのようなスタンスで反対するのか」という点が、不明瞭な点だ。

 小沢代表は「特措法は、国連決議の裏付けが無いから、延長は論外」という原理主義的な姿勢である。しかし、この前の報道2001に出演した鳩山氏は、責任政党を意識してか、柔軟な姿勢を示したのである。しかし、この喰い違いは、報道2001の他出演者に突っ込まれ、鳩山氏は全くタジタジであった。

 御存知の通り、民主党は全議員にテレビ自粛令を出している。

民主党、全議員にテレビ自粛令
 文書は「政局が揺れ動いているが、民主党の政治姿勢や政策方針にはなんら影響を与えない」とし、「メディア対応は妨げないが、政局に関することは小沢代表にお任せ頂き、政局評論などのご発言は慎まれるよう」と要請している。

 勿論、「延長の賛否」は政策の話だが、今後どう審議を進めていくかは、政局の話である。ましてや、今後、論議内容よりも政局主導で事は進んでいくだろうから、尚更、民主議員は、気楽な発言は難しくなる。

 かくの如き「議員のテレビ自粛令」の下、鳩山氏がテレビ出演したら、他の出演者から、幹部同士でのスタンスの違いを見抜かれてしまったわけだ。「こりゃダメだ」と思ったね。賛否以前の問題だよ。これから議論するのかもしれないが、あと一ヶ月半しか無いわけで。

 また、具合の悪いことに、どこの調査を見ても、延長に賛成が、反対を上回ってしまっている。

合同世論調査 海自補給、半数近く賛成
 今回の合同世論調査では、海上自衛隊によるインド洋での補給活動継続に賛成する意見が48・7%を占め、反対の39・1%を大きく上回った。前回調査では、11月1日で期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長反対が54・6%と、賛成を約20ポイント上回っていた。臨時国会最大の焦点として注目されたことや安倍晋三首相が辞任理由として挙げたことなどから、国民の理解が深まったとみられる。
毎日新聞世論調査:海自給油継続、賛成49%・反対42%
給油継続、賛成・容認が半数=反対は35%−時事世論調査
 時事通信社が16日まとめた世論調査結果によると、海上自衛隊のインド洋での給油活動の根拠法であるテロ対策特別措置法について「延長すべきだ」とする人は13.0%で、「延長はやむを得ない」36.1%と合わせた賛成・容認派が半数近くに達した。「延長に反対」は35.3%。
 賛成・容認派にその理由をたずねたところ、延長しなかった場合の「日米関係の悪化」を懸念する意見が36.8%で最も多く、「国際社会の要請だから」が35.7%だった。「海自の活動を支持している」とした人は4.8%にとどまった。
 一方、反対の理由は、海自の活動が「国連決議に基づくものではない」ことを指摘する人が27.8%、海自の派遣に「憲法上の疑義があるから」が26.1%、活動実態や費用などの「情報公開が不十分だから」が18.8%だった。 

 賛成が多数とて、時事にあるように、多くは「容認」に過ぎないから、自民とて油断は禁物である。しかし全体的には、「延長反対」が世論だと思い込んでいたであろう民主のほうに厳しい結果である。しかも、「国連決議に基づくものではない」を挙げる人は、小沢代表が口を酸っぱくして言っているにも関わらず、27.8%ほど。国連決議云々は、保守系議員にも幅広く反対を呼びかけやすくはあるが、その分、反対理由としては抽象的でプライオリティが低いのである。だから、今後、この理由により、延長反対の世論が盛り上がることはまず無いと思う。

 長々と書いてきたが、要するに言いたいことは、民主は、反対で党がまとまるために、相当な苦労をしている、ということ。党がまとまることさえ一苦労なのに、「反対のための反対をしない」とか、「言っていることが一貫する」とか、責任政党としての行動を取れるのだろうか? 甚だ疑問である。

 一方、自民のほうは、話が楽だ(誰が総裁になっても)。党内は既に特措法延長すべしでまとまっているから(仮に反対者がいても掻き消される)、あとは国民への説明を行い、野党と話合いを求め、それがまとまらないなら、3分の2で再可決か、あるいは次善の策か、という点を考えるだけ。綱渡りの政権運営とはなろうが、方向性は明確である。

 自民は、民主に対して、次のような揺さぶりをかけているが、これも方向性が明確だからこそ。

アフガン決議案:民主の主張を逆手…政府が働きかけ
 アフガニスタンでの活動にかかわる国連決議案に日本などへの謝意が盛り込まれたのは、11月1日で期限が切れる海上自衛隊の給油活動(インド洋)を継続させる材料を得たい日本政府の働きかけがあった。活動に反対している民主党が、その根拠に「国連決議がない」を挙げているのを逆手に取った動きで、政府・与党は決議を利用して世論を喚起しつつ、民主党より優位に立とうとしている。
(中略)
 民主党は、国連決議案について「我々の考えを変えるほどのものではない」(直嶋正行政調会長)ととらえている。国連決議をテコに民主党を揺さぶろうとする政府・与党の動きに警戒しつつも、自衛隊の給油活動延長は認めない方針で今後の政局に臨む。

 また、自民側は、総裁選を見る限り、給油の「一時中断」を織り込んでいる感じだ。

テロ特措法:自民党総裁選、「給油中断」織り込み進行
 25日の新政権発足からテロ対策特別措置法の期限が切れる11月1日まで1カ月余。臨時国会の会期末は同10日。日数が足りない。現在インド洋にいる補給艦「ときわ」の一時帰国は確実だ。焦点は活動再開への与野党合意を、いつ、どうやってつくるかに移っている。

 インド洋で海上自衛隊の給油を続けるかどうかは、次期政権に突きつけられた重い課題だ。しかし、自民党総裁選はすでに「一時中断・年内再開困難」を織り込んで進行している。

 麻生太郎党幹事長「単純延長は難しくなった」

 福田康夫元官房長官「ほとんど同じ意見でして」

 麻生氏は、臨時国会での新法提出と、野党が多数の参院で否決後に衆院の3分の2で再議決するのも辞さない「最速で再開」を目指す立場だ。

 一方、優位に立つ福田氏は言いぶりが違う。

 「民主党と協調的にやるしかない。総裁選で時間を費やし、選択肢は狭まってきた」(14日)

 「新法も議論されているが民主党とよく相談する必要がある」(15日)

 「正直言って(新法の準備の)現状はわかりません」「(再議決は)最後の最後の最後。めったにない話」(16日)

 この前、「誰が首相でも、3分の2再可決しか方法はない」と書いたが、11月1日という期限への拘りさえ捨てれば、むしろ柔軟な対応をとることが可能かもしれない。国会の審議と、一時撤退の準備や根回しを並行して行い、どちらに転んでも良いようにしておくべきだろう。

 民主にとっての理想のシナリオは、「自民が11月1日に向け強行突破する」こと。自民が強行突破すれば、民主は、党としての反対の理由は曖昧なままでOKだし、「無責任政党」としての行動を晒さずに、自民を批判できるからである。

 しかし、自民も馬鹿ではないから、11月1日は諦めている模様。もし、長期戦にもつれ込んだ場合、民主党は「党としての選択」を迫られる。
  1.どこかで、何らかの形で与党と折合いをつけ、賛成に回る。
  2.あくまで、反対を貫き通す。

 そして、この「党としての選択」を、適切なタイミングで自発的に行うことが、責任政党への第一歩となろう。

 これまでの民主は無責任政党であったが故に、自ら「党としての選択」をしなくとも、与党の不祥事・自滅・強行採決などに反発すれば、立場を維持していられた。「自民が11月1日に向け強行突破する」ことは、その従来のストーリーを踏襲するのに都合が良い。

 しかし、民主党は、いまや参議院第一党、一つの院の議決を左右するまでになった。よって今後は、「党としての選択」を、明確にすることが求められる。なにしろ政権政党は、全ての法案に対して、「党としての選択」を国民に示さなくてはならないのだから、「政権準備政党」も、それに耐えられるかどうか、チェックされるのは当然だろう。

 「党としての選択」とは、自党内での論議に基づく選択のことをいう。敵方との対決から逆算された「選択」は、「党としての選択」とは言えない。

 「党としての選択」は、党が大きいほど、重いものになる。政権など有り得ない小党は、党の理念に従って機械的に選択を行えばOKだが、政権獲得の可能性のある大政党では、そうはいかない。「割れそうな法案」であっても、「党としての選択」を、責任を持って国民に示すのが「責任政党」というものだろう。

 民主党の未熟さとしては、審議拒否とか採決集団欠席などのような、目に見える部分ばかりが問題にされるが、根本的には「『党としての選択』を示す重みに耐えられない」ということがあると思う。「党としての選択」を、審議拒否とか採決集団欠席などの実力行使にすりかえている、とも言えようか。郵政選挙で民主が大敗した理由も、結局はその辺りにある。

 しかし、特措法に関しては、「党としての選択」から逃げてばかりいられない。一時的にせよ、給油活動を撤退させるか否かは、事実上、民主党の意思にかかっているのだから。もし「撤退する」となった場合、そこに起こるハレーションは、良いものも悪いものも、民主党の選択の結果、ということになる。「自衛隊は撤退しろ。でも撤退した後に起こる不都合は、自民党が解決してね」で、「責任政党」になれるとは、当の民主党も思ってはいまい。

 それにしても、参議院勝利後の最初の重要課題が、民主のアキレス腱ともいえる自衛隊問題だったとは。



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2007年09月20日(木) | 05:25:51 | トラックバック(0) | 政治

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